備前焼ができるまで Vol.1 
ー 土づくり ー

釉薬を使わない備前焼にとって、
土づくりは作品の仕上がりを
左右する重要な工程です。
何十年も大切に保管していた
原土を水に溶かし
「どべばち」と呼ばれる
素焼きの鉢に移して、
余分な水分を抜いています。
釉薬を使わない備前焼にとって、
土づくりは作品の仕上がりを
左右する重要な工程です。
何十年も大切に保管していた
原土を水に溶かし
「どべばち」と呼ばれる
素焼きの鉢に移して、
余分な水分を抜いています。

原土

土づくり

備前焼ができるまで vol.2 
ー 土練り ー

余分な水分が抜けた土を
土練機にかけ、
「むろ」と呼ばれる
半地下の保管場所で、
乾燥しないように約半年寝かせます。
永く寝かせる事で
土に粘りと腰がでて、
手によく馴染む
成形しやすい土となります。
成形に入る前は、
土の固さを均一にし、
土中の空気を抜く為に
「菊練り」をして練り直します。
このような工程を経て、
ようやく成形に使うことができる
土が出来上がります。

菊練り

菊練り

備前焼ができるまで vol.3
ー 轆轤(ろくろ)成形 ー

大きな土の塊を轆轤に据えて
そこからいくつもの器を造る
「棒挽き」という成形技術です。
手の感覚だけで、
大きな土から小鉢1枚分の
土をとり成形します。
「こて」と呼ばれる木製の道具を使い
表面を綺麗に仕上げています。

轆轤成形

備前焼ができるまで vol.4 
ー 削り仕上げ ー

轆轤で成形した作品を1日〜2日
ゆっくりと乾かし、
削りのタイミングを見極めます。
「しった」と呼ばれる削り台に
作品を置き、
鉄で造った「かんな」と
呼ばれる道具で
高台を削り出します。
何万枚もの削りで得た
指先の感覚を使い、
ミリ単位の繊細な
削りをしていきます。

削り

備前焼ができるまで vol.5
ー 乾燥・仕込 ー

削り終えた作品を室内で
ゆっくりと乾燥させます。
直径14㎝で成形した作品は、
乾燥の段階で13㎝まで収縮します。
今回の作品である
緋襷焼(ひだすきやき)の
小鉢に入った赤い線は、
藁の跡です。
乾燥した藁をひたすら木槌で叩き、
柔らかくして、
良い発色を狙います。

高台

仕組み

備前焼ができるまで vol.6
ー 窯詰め ー

今回使用する窯は、
登窯の4分の1程度の薪窯です。
炎の走り方や模様のつき方を
イメージしながら、
5日間かけて約1000点の
作品を詰めていきます。
備前焼の地色、
松の灰による黄色、
藁による緋色の線が
バランス良く発色するように
窯に作品を詰めていきます。

窯詰め

備前焼ができるまで vol.7
ー 松割木 ー

備前焼の窯焚きには、
赤松の木を燃料に使います。
赤松は、松脂を多く
含んでおり火付きがよく、
火力も強い材質です。
仕入れた時は、
木に水分が含まれている為、
割木小屋で約6ヶ月かけて
乾燥させます。
乾燥した約400束(2.8t)の
赤松の割木を窯場に
運び込みます。

松割木

備前焼ができるまで vol.8
ー 窯焚き ー

約2.8tの赤松の割木を
6日間焚き続け、
作品を焼き締めます。
写真は仕上げの段階で、
窯内の温度は
1250度位になってます。
割木を焚き口に掛けると
一瞬で火がつき、
炎の渦が窯内を埋め尽くします。
炎は作品にぶつかりながら
煙突にぬけて、
大きな火柱となり噴き上ります。

窯焚き

備前焼ができるまで vol.9
ー 窯出し ー

6日間かけて焚き上げた窯を
6日間かけて冷まします。
「かがみ」と呼ばれる耐火煉瓦を
積み上げた壁を崩して、
作品を1点づつ窯から
出していきます。
炎があたれば茶色になり、
炎をかわせば白色になる。
藁を置いた跡には緋色の線が付き、
松割木の灰がかかれば黄色になる。
土、形、仕込み、置き場所、
炎の走らせ方を考えて出した色です。

窯出し

備前焼ができるまで vol.10
〜すりこ・水検査〜

窯から出た作品には、
割木の灰・炭・藁が付いている為、
1点づつ砥石とサンドペーパーを
使い綺麗に仕上げていきます。
「すりこ」と呼ばれる作業です。
指先の感覚で仕上げ具合を確認する為、
1週間も続けると指先の皮が減り、
指紋が薄くなります。
熱いお茶が入った湯呑みが
持てない位です(笑)
仕上げた作品を水で洗い、
水漏れがないか検査をします。
目では見えにくいキズを
確認する為に行います。

砥石、ペーパー

すりこ

備前焼ができるまで vol.11
ー 用の美 ー

無釉焼締の備前焼は素朴な色をしていますが、
料理を盛り付けてみると
料理と器の双方が引き立たちます。
使って頂いてこそ、
良さの分かる焼物だと思っています。
また、使い込む程に艶が増し、
愛着ある器へと育っていきます。
焼き色は1点づつ異なる備前焼ですが、
使う方の気持ちを考えて
心を込めて創らせて頂きました。
日常の生活で器を使って頂ける事は、
我々造り手にとって、
大変嬉しいことです。